皆さんはじめまして!私、みやびといいます。一見どこにでもいるフツーのネコミミですが、実はそこらの大量生産有象無象とは一味違います。なんと!私、あの神野真人様の命でこの香港ジオフロントに潜入した、市街殲滅用のヴァンパイアtypeな強化ネコミミなんです。私をフツーの女の子だと思って居住許可なんて出しちゃった愚かなヒューマン達を、頑張って殺っちゃおうと思います。本当は人殺しなんて怖いけど、万が一ばれちゃっても神野様の無敵の軍団がバックにいる私に怖いものなんてありません!神野様バンザイ!!

 さて、潜伏先(アパート)の準備も出来たことですし、早速はじめてのハンティング♪に出かけたいと思います……。
「おい、みやびちゃんいるか!?」
 って、来客みたいですね。お隣の劉さん、なにか御用でしょうか?
「ビッグニュースだ!戦争が終わったぞ!!」
 へえ、それはおめでたい……って、あれ?それって……。
「なに寝ぼけてるんだよ、神野真人が討ち取られたってのに!!都市中お祭り騒ぎだ」
 え……ええ~~!?
「はは、嬉しくて言葉も出ないか(激しく違います)!じゃ、俺はこれで」
 嬉しそうに去っていく劉さんの背中を見つつ、私は床に崩れ落ちるのでありました。まる。

その血液をください。

Syuji

第一話 死にます。

 ここは香港ジオフロント。神野真人様の無敵の軍団から、地を這う虫ケラのように逃げ隠れたヒトたちの集まる街。私、小川みやび(満2歳)は愛する神野様のため、地下に閉じこもったヒトたちを内側から切り崩すという重要な任務を帯びてここに来たわけです。

 ……来たまでは良かったんですけどね、ハイ。テレビをつければどのチャンネルも神野様戦死の緊急特番。外からは勝利を祝うヒトたちのお祭り騒ぎが聞こえてくる。ああ、どうしようかなぁ……。

 私が勇んでここに来たのも神野様と最強軍団の後ろ盾があったからでありまして。こんな孤立した状況で人殺しなんてしようとしたらそれこそ即ボコボコです。タコ殴りです。ダメです。死にます。でも、私もヴァンパイアtypeなんて肩書き持ってるからには血をちゅーちゅーしないと生きていけませんので、何とかしなきゃいけないわけですよ。こんないっぱいヒトがいるんだから一人ぐらい……って考えは全くダメです。雇われの賞金稼ぎばっかりだからって香港自治政府の捜査能力を甘く見ちゃいけません。悪いコトしてると速攻ハンターが来て狩られます。金がかかるとヤツラ強すぎです。この前、短刀一本でエンジェルtypeのバケモノ倒してるヤクザみたいな見た目のハンター見ましたもん。鬼ですかあなたは、って感じです。私も2歳で死にたくないので、ここは合法的にいくしかありません。……血液銀行にダイナミックエントリーです。

 さすが私営の(怪しい)血液銀行、うるさいこと詮索せずにお金さえ払えば売ってくれますね。お金さえ払えば。……ええ、400mlで20000Crはちょっと、いえ、物凄くお財布に響くのですが。ええと、私が必要とする血液の量は1週間につき800mlなので、1ヵ月約16万Cr?……無理です。家賃と食費だって別で払わなきゃいけないのに。ああ、神野様。何故私をおいて逝ってしまったのですか(泣)。このままでは私がそっちへ逝くのも時間の問題です……。

 ……現実逃避してる場合じゃありません。とりあえず、この「無職」という危機を何とかしないと、本当に神野様のところへ逝っちゃいます。こんな忠誠心の薄いヤツでごめんなさい。まだ死にたくないんで。とりあえず、手っ取り早くまとまったお金が手に入る職業といったらアレしかありません。今流行の「ハンター」ってヤツです。基本は賞金首狩り、遺跡が見つかれば荒らしに行き、他に仕事がなければ何でも屋をする。聞けば聞くほどアンダーグラウンドな仕事ですが、元々この街は地下です。まともな警察組織が無い今どきでは結構重宝されてるらしいです。この仕事はちょっと腕に自慢があれば成り立つので、私のようなヒトにはピッタリの仕事です。本当は私は狩られる側なのは気にしない方向で。そうと決まれば早速、近所のハンター達が集まる店「銀の鈴亭」に行ってみたいと思います。